環境にも体にも
やさしい米作り

現状は籾から農薬漬け

一般的に稲作りでは、始めに籾を農薬に漬け、農薬が散布された苗箱へ蒔かれます。そして田植えが終わってすぐに、あるいは同時に除草剤が蒔かれます。こうした作業は稲が害虫に食べられたり病気になったりしないように、また雑草に負けないようにするために行われてきています。
戦後、農業をやる人たちも減り、田んぼに草取りなどでなるべく入ることがないようにするためのよりよい方として、このようなやり方が主流になってきています。(農薬を撒く回数などはその地域の農協の指導や昔からのやり方によってことなるようです。)

農薬や除草剤が水を汚染

けれども、一方で無農薬有機栽培の米を求める人も出てきたり、農薬や除草剤が私達の一番大事な水を汚染することもだんだん指摘されてきています。確かに、長年無農薬無除草剤でやっている田んぼと長年一般的なやり方でやってきた田んぼとでは、まず外見が素人目でも明らかなほど違います。
まず、農薬を撒かない田んぼには、小さい虫たち、おたまじゃくしやタニシや他の小動物などがとてもたくさんいます。泥もやわらかく、そこへ立つといい気持ちがします。そして、稲は色濃くたくましささえ感じられます。

命の循環を助ける無農薬無除草剤の田んぼ

農薬や除草剤は、害虫や雑草を殺しますが、同時にその他の虫なども生き難くしてしまい、水も汚染してしまいます。無農薬無除草剤栽培ができれば、人や他の生き物やまわりの環境などにとってもとてもいいことだということは明らかです。
このように、無農薬無除草剤無化学肥料の水田は、貯水力や水の浄化力、命の循環を助ける力、命を産み、はぐくむ力など、自然環境保全のための大きな役割を果たすことができるのです。
コウノトリと田んぼ
田んぼの生き物
おにぎり

水田の役割

水田は自然の万能ダム

水田の貯留可能容量60億トン

土と水と太陽と空気と、自然の恵みを利用してお米を育てる水田は、私たち日本人の命の源です。そして自然もまた、水田によって命を守られています。ご存知のように、日本は雨が多い国です。大雨が降ると雨水が一度に川に流れ込み、洪水を起こす危険があります。
水田は雨水を貯める天然のダムのようなものです。しかも底が土なので、溜まった雨水は少しずつ土にしみ込み、半分は地下水に、そして半分はゆっくりと川へ流れていきます。水田はこうして洪水を防ぎ、川の水量をコントロールしてくれているのです。
日本のすべての水田における経済的評価で、日本の水田における雨水の貯留可能容量は合計で60億トンとも言われています。

黒部ダムの貯水容量の30倍

これは、全国の水田面積を約300万ヘクタールとし、うち半分は整備済みで30センチまで貯水することができ、残りの半分は未整備で10センチの貯水能力があるとみなして計算したものです。すべての水田が整備されたとすると、90億トンの貯留が可能です。
これから水稲栽培のために必要な湛水分量を差し引いた51億トンが全国の水田の総貯水容量です。これは黒部ダムの貯水容量の30倍に相当します。日本農業研究所によると、この全国の水田の総貯水容量をダム建設費の償却費と維持費に換算すると、年6兆1200億円となり、1アールあたり約20万円に相当することになります。

畦(あぜ)が土砂崩れを防ぐ

さらに山地の多い日本では、雨による土砂崩れの問題も深刻です。斜面に水田があれば、田の周りを囲む畦(あぜ)が壁となり、土砂の流出も防げます。まさに水田は、自然と持ちつ持たれつ生きてきた日本人の智恵の結晶といえるでしょう。
もっと知りたい方へ 
『水田のはたらき』関矢信一郎著 家の光協会 1992年を参考にし、一部抜粋しています。
黒部ダム
日本の水田は黒部ダムの貯水容量の30倍の可能性を秘めています
洪水
田んぼの畦
田んぼ

水田は本来、多くの命のゆりかご

水田は浄水器と空気清浄機とクーラー

人が生きていくためには、食糧はもちろん、水と空気が欠かせません。この水と空気を守るのも、本来の水田の大切な役目です。たとえば、水は、まず田の中を流れているうちにゴミなどが沈殿し、地下へしみ出るとき土の層が天然の濾過フィルターとなり、飲み水として適した地下水に浄化されます。田の上では稲が光合成を行い、新鮮な酸素を送り出します。
つまり水田は、お米をつくりながら浄水器と空気清浄機の役目も果たしているのです。また暑い夏の日は水をたくさん蒸発して気温の上昇を抑え、クーラーとしても働きます。さらに蒸発した水は雨雲をつくり、恵みの雨として再び田に還ります。人がつくったものとはいえ、水田はもはや大自然の生態系の一部なのです。そして人の暮らしと自然を守りながら、双方の仲を取り持ってくれています。

命の循環を支える田んぼ

また、子どもの頃、田んぼへ出かけてはオタマジャクシやザリガニをつかまえた…という経験をお持ちの方も多いと思います。水田は、メダカやドジョウなどの魚、タガメなどの昆虫類、タニシも潜む生き物の宝庫でした。稲には稲を食べる虫たちがつきます。それをカエルやトンボが食べ、このトンボや水の中の魚を狙って鳥たちもやってきます。
水田を舞台にたくさんの命のドラマがそこにあります。そしてこの舞台には四季があり、微妙に情景が変わります。たとえば、トンボは秋に水の抜かれた田んばに卵を産みつけ、春、水が入ると卵が孵化してヤゴになり、夏には成長した稲の茎につかまって羽化する…という具合です。水田を巡って繋がる命の環(わ)がそこにあるのです。

逆に水田が汚染の原因に

水田は日本の自然環境として重要な役割を担い、他の自然環境と複雑にからみあい、調和発展してきました。そして今では,水田を失うことは日本の豊かな自然の全てを失うといってもよいほど、水田は日本にとってなくてはならない存在になっています。
けれども一方で、戦後の農業の近代化、化学化に伴って、水田は昔の面影からは遠ざかり、そこにはかえるやトンボや鳥たちの姿がほとんど見られなくなってしまいました。それには、農薬や除草剤、化学肥料が大きな影響を与えています。そして、先ほど述べたように、化学に頼ることによって、本来環境を浄化する役割があるはずの水田が、全く逆に汚染の原因になってきています。
水道水
扇風機
バッタ
稲を食べる虫たちがつき、それをカエルやトンボが食べ、このトンボや水の中の魚を狙って鳥たちもやってきます

農業と環境問題

塩害や土壌浸食で砂漠化

オゾン層破壊、温暖化、酸性雨、砂漠化、熱帯雨林の消失など地球規模の環境破壊が問題となっている中で、農業もまた環境を破壊する大きな原因になっています。
地球規模で見てみると、乾燥地では、水を引いて生産性を上げようとする灌漑農業が大規模に行われていますが、そこでは塩害に悩まされ、世界中で約2億ヘクタールに及ぶ灌漑農地のうち、20万~30万ヘクタールが毎年耕作不可能になっています。
また、南北アメリカにみられる大規模な畑作地帯でも、ここでは近年輪作体系が崩れ、単作連作が増えています。この結果作物のない期間が増えて土壌浸食が激しくなってきました。こうした塩害や土壌浸食は砂漠化の主な原因になっています。
また、ヨーロッパなどの先進国では、多量の肥料を施用して、高い収量を上げています。ここでは厩肥や化学肥料の窒素が硝酸となって水と共に移動して、一部は作物に吸われますが、残りは河川、湖沼、地下水を汚染する原因となっています。

日本の化学肥料農薬使用量は世界のトップクラス

では、日本ではどうでしょうか。日本の化学肥料農薬使用量は単位面積当たりでは世界のトップクラスと言われています。水田でも玄米収量当たりの化学肥料を比較すると、日本はタイの600倍以上、カルフォルニアの7倍です。過剰にまかれた化学肥料は稲に吸収されない分、垂れ流しになり河川の窒素濃度を高め、飲み水にする場合、それを浄化するには莫大な経費と設備が掛かってしまいます。
ですから、農業というのは、ただ単に私たちが食べる野菜や穀物などを生産することだけでなく、まわりの自然環境にも大きく影響することがわかります。そういうことが最近になってようやくメディアや研究者の間などでよく言われるようになってきました。なかでも、今水田の役割というのが、注目を集めつつあります。

もっと知りたい方へ

『水田のはたらき』関矢信一郎著 家の光協会 1992年を参考にし一部抜粋をしています。
『安全でおいしい 有機米づくり』松修 中島紀一 河児晶子 家の光協会 1993年参考
大気汚染
廃棄物
[玄米化学肥料]
日本はタイの600倍以上、カルフォルニアの7倍
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